【開催報告】第11回スミダ学園:退院支援の見えないプロセスを見える化する

2026年8月26日、スミダ薬局入谷店にて「第11回スミダ学園」を開催いたしました。今回のテーマは「退院支援の見えないプロセスを見える化する〜退院時カンファレンスに看護師としてどう臨むのか〜」です。

■ 「感覚」を言語化し、チームの軸を作る
訪問看護師の鳥飼由紀氏(ベストリハ株式会社)より、ベテラン看護師が現場の「感覚」で行っている退院支援のプロセスを、いかに言語化し次世代へ伝えるかについてお話しいただきました。
- 臨床倫理の4分割法の活用: 退院カンファレンスでは医療情報に偏りがちですが、事前にフレームワークを用いて情報を整理することで、客観的かつバランス良く患者さんの全体像を捉えることができます。
- 言葉の裏にある感情の推測: 「点滴を気にせず息子を抱きしめたい」という本音の一方で、「弱った姿を見せたくない」という葛藤など、患者さんとご家族の間に生じる「揺らぎ」や「ズレ」を想像し、寄り添う覚悟を持つことが支援の軸となります。
- 多職種からのアプローチ: 薬剤師(小池氏)からの「家に帰ってやりたいことはありますか?」という問いかけが、患者さんの深い本音を引き出すきっかけになった事例も共有されました。
■ 「自分らしさ」の構造と家族志向型ケア
続いて、訪問医師の角野太朗氏(やまと診療所)より、患者さんの「自分らしさ」にどう寄り添うか(ACP)について解説いただきました。
- 「らしさ」の成り立ち: 過去の経験や選択の積み重ねが、その人の価値観や「らしさ」を形成します。この「らしさ」は、誰に聞かれるかによっても揺れ動くものです。
- ジョハリの窓の視点: 本人も家族も知っている「らしさ」だけでなく、対話を通じて初めて見えてくる「盲点の窓」や「秘密の窓」に気づくことも重要です。
- 家族志向型ケア: 家族が患者本人の希望を正しく言い当てられる割合は約68%というデータがあります。患者個人だけでなく、家族の歴史やライフステージ、それぞれの役割をひとつの単位として捉えることで、対立して見える意見の背景が理解できるようになります。

■ 多職種で深掘りするグループディスカッション
講演に続くグループワークでは、がん末期の方の症例をもとに「本人の希望と家族の意向をどのように調整するとよいか」について話し合いました。各々が訪問時に意識していることを発言し、お互いの意図を深掘りする白熱した意見交換となりました。
特に薬剤師からは、「診察同行時と、その後の薬局の訪問時で、本人やご家族の様子が変わっていることが多い」という実体験が共有されました。診察時には緊張感から普段以上にしっかり振る舞い、薬についても理解されたように見えても、後日薬を届けに行くと使い方が抜け落ちていたり、様子が異なっていたりすることが多々あります。こうした「時間の経過や場面による変化」を拾い上げることの重要性に、多職種の方々も深く頷かれていました。
■ グリーフケアと「その先」を見据える視点
後半では、どこで最期を迎えるかが残されたご家族の「グリーフケア(悲嘆のケア)」に大きく影響することも語られました。お墓や葬儀など「亡くなった後の家族の生き方」までを見据え、一時点での意思確認で終わるのではなく、多職種がタイミングをずらしながら様々な角度からアプローチし、変化する本音をすり合わせていくことの重要性を再認識しました。
教科書的な内容では答えが出ない領域だからこそ、職種を越えて意見交換できた非常に有意義な機会となりました。ご登壇いただいた鳥飼氏、角野氏、小池氏、そして活発な議論を交わしてくださった皆様、本当にありがとうございました!次回のスミダ学園もどうぞご期待ください。